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平成30年10月22日第9回 柔道整復師のリスク管理 – 穴田夏希 – 森ノ宮校友会連載ブログ②
〜内部障害から考える柔道整復師のリスク管理 〜
内部障害は柔道整復師のフィールドでも生かせる知識で、今後必要になってくると考えています。 内閣府から発表されている障害種類別の障害者数(年次推移)を見ても、視覚障害、聴覚・言語障害、肢体不自由はほぼ横ばいであるにも関わらず、内部障害の占める割合は平成8年から18年の10年間で21.2%から30.5%へと増加しています。 また、本邦における死亡率において、内部障害に代表される心疾患、肺炎は第2位と第3位であり、超高齢社会を迎えさらに増加傾向にあります。平成23年の生活のしづらさなどに関する調査では、全国の在宅障害者数は386.4万人と推定され、そのうち内部障害者数は93.0万人(24.1%)であったと報告されています。内部障害のうち65歳以上は68.2万人(73.3%)と圧倒的に高齢者に偏っているのが現状です。 忘れてはならないのが、内部障害に含まれる「糖尿病」は、介護が必要となった主な原因1位の脳血管疾患や、2位の認知症(平成22年国民生活基礎調査)のリスクファクターと認識されているという点です。 超高齢社会において、介護予防の観点からも、内部障害は取り組まなければならない課題だと言えます。 要するに、内部障害は高齢者に多く、しかも増加傾向で、介護が必要となるファクターとしても重要だということです。 柔道整復師は主に運動器、整形外科領域を学校で学びます。卒業後の進路の多くが整骨院、接骨院、デイサービス、クリニックになると思いますが、それぞれに共通しているのは、高齢者を対象とすることが少なくないという点です。もちろんスポーツトレーナーや比較的若い人を対象として働かれている先生もおられるでしょうが、割合としては高齢者を対象としている柔道整復師は一定数おられると思います。 前述したように、内部障害は高齢者に多く、私が勤めている病院においても純粋な整形外科疾患のみという患者様はほとんど見かけません。ベースに糖尿病、心不全、腎不全、COPDなどがあるというのが当たり前になっています。 今思い返せば、私が柔道整復師(機能訓練指導員)としてデイサービスに勤務していた時にも末期心不全症状やを呈している利用者様がおられましたし、整骨院でさえCOPDでチアノーゼ症状を呈しているような患者様が稀に来院していました。もちろん柔道整復師としてそれらの内部障害に積極的な介入をするべきとは考えませんが、最低限のリスク管理は必要です。今回個別の事例は省きますが、病態や病期によっては運動量や施術内容を工夫しなければいけない場合があります。 「運動器のプロでありながら、内部障害などのリスクにも対処できる」 私はそういう柔道整復師がいてもいいのではと思います。【理学療法士/柔道整復師/鍼灸師 穴田夏希(柔道整復学科7期)】
続く。 ←←←前回 第8回「理学療法士の業務」 →→→次回 第10回「職種の壁を跳び越える」