第6回 おでこのメガネ – 穴田夏希 – 森ノ宮校友会連載ブログ② 

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平成30年8月6日 
第6回 おでこのメガネ- 穴田夏希 – 森ノ宮校友会連載ブログ② 

第6回 おでこのメガネ

珍しく鍼灸関連の本を手にしたので、ご紹介したいと思います。

「閃めく経絡」

著者のダニエル・キーオン氏は、救急医療を専門とする医師して活躍するかたわら、中医学と鍼治療の学位も取得しており、西洋医学の最前線に身を置きながらも、鍼灸と氣を再確立する目的で本書を執筆されたそうです。そして、訳者は京都府立医科大学特任助教の建部陽嗣氏。何を隠そう私の大学時代の同級生で、当時も今もお世話になり続けている鍼灸業界の先導者。同級生なのにどこでこんなに差がついたのか考えてみましたが、大学当時から雲泥の差があったように思います…。

さて「閃めく経絡」の感想ですが、作中の著者の言葉を拝借すると、

「おでこに掛けていたメガネを探していたようなものだ」

この一言につきます。

私はどちらかというと東洋の考え方に否定的で、西洋医学に根ざした話の方が飲み込みやすい傾向にありました。鍼灸の大学では西洋、東洋どちらのカリキュラムもありバランス良く学んだ記憶はあるのですが、両者の共通項を説明する授業はほとんどなかったように思います。私が学生だった当時から、「あの教授は東洋医学派」「あの先生は西洋医学派」など、教員もそれぞれの考えに依り、お互いを否定し合う、そんなことがあったと記憶しています。

しかし本書では、「経絡」や「氣」という東洋医学アレルギーを起こしそうな単語を、ファッシア(膜、筋膜)、コラーゲン、電気、そして発生学などの比較的馴染みのある言葉で解き明かしてくれています。東洋と西洋両方の医学が人体で起きる現象を同じように描きだしていることを、思慮深い言葉で説明しています。

鍼治療の効果を実感することはありましたが、なぜ効くのか?の問いには浅い見解しか持ち合わせていませんでしたが、本書を読み終わることには、探していたメガネがおでこに掛かっていたことに気付いた時のような気分になりました。(実際私は裸眼ですが…)

もし私と同じように、早々に東洋医学アレルギーを示してしまった鍼灸師の先生がおられましたら、この本が特効薬になるかもしれません。

【理学療法士/柔道整復師/鍼灸師 穴田夏希(柔道整復学科7期)】

続く。

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