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平成30年7月13日
第5回 地域包括ケアシステムと整骨院 ~ 役割を再考する ~ – 穴田夏希 – 森ノ宮校友会連載ブログ②
第5回 地域包括ケアシステムと整骨院
地域包括ケアシステムという言葉を耳にしたことはあると思いますが、その詳細や運用方法について理解している人は少ないのではないでしょうか。私もまだまだ勉強中の身ですが、今回はこの地域包括ケアシステムの中で、私たち柔道整復師がどのように存在感を示していくか。その可能性について私見を述べたいと思います。
地域包括ケアシステム。「厚生労働省においては、2025年(平成37年)を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。」
少し乱暴な言い方ですが、私はこのように理解しています。
「医療、介護保険費用を抑制するために、みんなで助け合いながら元気に歳を重ねましょう。そのために大きな枠組みは用意しましたので、地域ごとの事情も考慮しながら、みんなでアイデアを出し合って下さい。」
近隣諸国と比べても類をみない速度で高齢化が進む日本において、医療、介護の費用抑制が最大の課題となっていることは言うまでもありません。そんな社会情勢の中生み出されたのがこの地域包括ケアシステムと考えられます。例えば理学療法士は、既に訪問リハビリや介護予防などを主として、その歯車となるべく奮闘しています。
それでは柔道整復師はこの機会をどのように捉えているでしょう。
日本柔道整復師会のホームページを開くと、「地域包括ケアシステム」「地域ケア会議」「痴呆性老人対策」などの言葉を確認できます。機能訓練指導員を認定し、介護予防の分野でイニシアチブを取ろうとしているような印象を受けます。私も以前デイサービスに勤務し、機能訓練指導員として介護予防に関わっていたことがありますが、地域包括ケアシステムにおいては、介護保険を使用しない形での介護予防が求められ始めています。
例として大阪府大東市の取り組みをご紹介します。大東市は市に勤める療法士が関わり、「元気でまっせ体操」というものを推し進めています。(いかにも大阪らしいネーミング…)詳細は市のホームページや紹介記事をご覧いただきたいと思いますが、住民による自主運営の体操グループを設立し、住民主体で介護予防を行っています。2017年時点で同市内に100グループ以上あるそうで、今後、このような取り組みが全国に広がる可能性があります。
大東市の事例を紹介しましたが、前述の通り、地域包括ケアシステムは地域ごと、自治体ごとに内容を変えられる枠組みになっており、まだまだ流動的で、柔道整復師にも存在感を示すチャンスがあるのではと、日々、以下のようなことを妄想しています。
地域特性や競合などの影響により幅はありますが、私が大阪市内の整骨院で働いていた頃は、整骨院の商圏は10分程度だと教えられました。地域包括ケアで定められている日常生活圏域が概ね30分であることを考えると、それぞれの施術所を地域の介護予防拠点として、住民が体操をする場として利用できるのではないかと考えています。(大東市では公民館などを利用しています)
もちろん施術所を一時的に貸し出すことで、コストを取ることは想定していません。あくまで施術所の「社会的役割」を創出するための提案です。機能訓練指導員でもある柔道整復師が所属する施術所で、住民が体操を行う。場所も、健康を指導できる人材も揃っている施設。それが柔整施術所である。そんな風に地域包括ケアシステムの中で柔整施術所の必要性をアピールできないだろうか。
昨今、特に大阪では整骨院(接骨院)が増えすぎ、歩けば当たる状況です。当然競争は苛烈となり、少ないパイの奪い合いに終始している現状があり、柔道整復師の、整骨院(接骨院)の社会的役割について議論されることが少なくはなかったでしょうか。その昔、柔整施術所は外傷を診るところでした。その後、電療や徒手的なサービスを行う場所として広く認知されました。それぞれの施術所は競争に勝つために差別化を推し進め、そもそも整骨院は何をするところなのか?という問いに答えられなくなっていったような気がします。
柔道整復師が施術所を通して、社会に対してどのような新しい役割を提案できるか。これからも一柔道整復師として考え続けたいと思います。
【理学療法士/柔道整復師/鍼灸師 穴田夏希(柔道整復学科7期)】
続く。