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平成30年7月3日
第9回 臨床エピソード・小児はりで嬉しかったことは… – 足立繁久 – 森ノ宮校友会連載ブログ①
第9回 臨床エピソード・小児はりで嬉しかったことは…
いよいよ終わりも近いので、臨床でのエピソードについて書こうと思います。最近の小児はりではこんなことがありました。
「かんのむしがひどくて、誰にでも噛みつくんです」と、こんな悩みを抱えるお母さんが来院されました。その子はまだ2歳に満たない男の子。噛みつきも「かんのむし」の定番の症状のひとつです。
噛みつく相手は、お母さんお父さんだけでなく、保育園の先生やお友だちにもガブリ!としてしまうとのこと。まだ大人は未然に避けたりして対処ができますが、お友だちのお子さんは無防備なだけに、お母さんとしては気が気ではありません。噛みつきの他にも「怒る・泣く…」といった「かんのむし」の症状がそろっています。
来院当初、お母さんは本当に心配が尽きない様子でした。
「私の育て方に原因があるのでしょうか?」
「この子は大きくなった時に怒りっぽい子になるんでしょうか?」
「噛みつきって本当に治るのでしょうか?」
…と、何度も質問していました。そのたびに私は「大丈夫ですよ」「絶対治るから心配いらないですよ」と答え続けました。なぜ大丈夫と言い切れるかといいますと…「かんのむし」って情動の発育が活発な子に強く出るものなのです。
このことは「かんのむし」を治療するうちに分かってきたことですが、「かんのむし」はお子さんの精神・情動が発達することで、身体や環境にギャップを感じて生じるイライラなのです。(これ以上の詳しい話は別の機会に置いておきます。)このイライラを健全に発散できれば「かんのむし」は自然と治るのです。治るというよりも、お子さんが自分の力で処理できるようになるのですね。
ですから、小児はりを開始して2診目にはこのような言葉を聞くようになってきました。目つきや顔つきが穏やかになった気がします。噛みつきも気持ち減ったように思います。
少しでも変化があるとお子さんの場合は早いもので、良い方向にどんどん進んでいきます。
「幼稚園で噛みつく回数が減ったといわれるようになりました!」
「発表会の練習も泣かずにできるようになりました!」
「保育園の先生に小児はりってスゴイね!って言われました!」
…と、来院してくれるたびにお母さんが嬉しそうに報告してくれるようになりました。
それとともにお子さんに関する不安を口にする回数も無くなってきました。お母さんの心配や不安が無くなると、自然とお子さんの症状も落ち着いてくるのです。この記事が皆様の目に触れる頃には小児はりも卒業しているかと思います。
お母さんが以上のような経験することには、とても重要な意味があると思います。子育てに悩み、試行錯誤を経て、一件落着する…このプロセスを繰り返すことで、お母さんには子育てに対する自信と経験が蓄積さるのです。そして、このプロセスに鍼灸師が関わることができるのはとても大切なことであり、有難いと思う次第です。
次回は10回目。最終回となります。続く。