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平成30年5月10日
第6回 マタニティ鍼灸を選んだ経緯と大事にしていること – 足立繁久 – 森ノ宮校友会連載ブログ①
第6回 マタニティ鍼灸を選んだ経緯と大事にしていること
私の鍼灸院では妊婦さんへの鍼灸にも力を入れています。いわゆるマタニティ鍼灸です。
以前は小児はりに力を入れていました。ですが小児はりを続けていくうちに『子どもだけに鍼してもダメだ。』『お母さんをケアして良くしないと…。』と思うようになったのです。
というのも小児はりでお子さんの症状を良くしても、すぐにお子さんの症状が戻ってしまう(再発する)ことが多かったのです。
『なぜだ?』『腕が悪いのか?』といろいろ考えました。
まだまだ私の腕が未熟だったのもあったのでしょうが、それとは別に「お母さんの体調が原因だ!」という答えに行きつきました。
“母原病”という言葉があります。でもそれとは違って、お子さんの症状の原因をすべてお母さんに押し付けるつもりはありません。
私の答えとしては『お母さんこそ大変な状態にある。先にお母さんの疲労と緊張を軽くしないといけない。』『そうすれば育児にも余裕ができて、この子の症状も軽減するはずだ。』と感じたのです。
でも、お母さんってあまり治療を受けてくれないのです。『私よりもまずわが子を先に治して欲しい』そんな母心が理由のひとつだと思います。
ですから、次に出した答えが『お母さんが無理なら、妊婦さんに治療すればいい。』『妊婦さんは積極的に治療を受けてくれるはず。』とマタニティ鍼灸に辿り着いたのです。
このような経緯もあって「快適な妊娠生活を過ごすためのマタニティ鍼灸」も大事なのですが、「子どもの健康を作るため」ひいては「より良い子育て」のためのマタニティ鍼灸を重要視しています。
また、妊娠中は女性がご自身の健康に最も気を使う時期だと言えます。
お困りの症状もたくさんあります。逆子はもちろんのこと、つわりも妊婦さんを苦しませる症状です。
重篤なつわりの妊婦さんは入院するほど厳しい状態にあります。また軽度〜中程度のつわりでは産院で訴えても特に処置はなく、「時期が来れば治りますよ」と言われ妊婦さんは耐えるしかありません。
しかし病院で対応してもらえない症状こそ東洋医学の出番です。
逆子だけでなく、つわりに対しても鍼灸は効果的です。妊娠前・妊娠中の体質を把握すると鍼灸でも打つ手が見えてきます。
しかしここで注意が必要なのは、鍼灸の出番だからといって誰でもマタニティ鍼灸に手を出して良いわけではありません。
特につわりの時期はデリケートな週数ですから、母体や胎児の害になるような鍼灸は厳禁です。
現代医学の知識はもちろん、東洋医学の産科の両方把握する必要があると考えます。
例えば『傷寒雑病論』にも婦人妊娠病があるように古くから各症状に対する処方が伝えられています。(もちろん時代を経るごとに産婦人科医学も発展しています。)
ちなみに、つわりに対して病院でよく処方される漢方薬のひとつに小半夏加茯苓湯がありますが、このお薬も『傷寒雑病論』に記載されている処方です。
このような漢方処方からもヒントを得て、伝統医学としてのマタニティ鍼灸を当院では実践しています。
続く。